セデンタリー(座りっぱなし)は、喫煙と同じくらい危険ってほんと?

セデンタリー(Sedentary)、座りっぱなしという言葉があります。

Sedentaryとは、座り、座業という意味です。最近は、「座りっぱなしで体を動かさない」ことと解釈されています。

 

また、単なる運動不足ではなく、長時間じっとしている状態を指しています。

 

デスクワーク中心の人など、現代人には特に珍しくない状態ですが、最近の医学界ではこのセデンタリーが「寿命を縮める」と注目されています。

 

日本抗加齢医学会理事長の坪田教授は、「セデンタリー・ライフスタイル、いわゆる動かない生活は、タバコと同じくらい体に悪く、がんや心筋梗塞などの命にかかわる病気の原因になることがわかってきました。」と指摘されています。

 

タバコが体に悪いことは常識となっていますが、座りっぱなしで体を動かさないことは、タバコと同じくらいに体に良くないらしいのです。

データが示す座りっぱなしのリスク

WHO(世界保健機関)は、1日、時間以上座っている人は、4時間以下の人に比べて病気になるリスクが40%も高くなると発表しています。

 

長時間座っていると病気になる!

 

これが本当なら、大変なことになります。

 

例えば、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症/肺塞栓症)がいい例です。

 

飛行機の狭い座席(エコノミークラス)に長時間座っていることで、脚への血行が悪くなり、静脈中に血栓ができます。

 

それが肺動脈に詰まると呼吸困難や発熱を起こし、死に至ることもある病気です。

 

エコノミークラス症候群の原因は「血行が悪くなる」ことです。

 

それに加えて「交感神経の緊張、エネルギー消費の低下がセデンタリーの問題と言われています。

2時間以上の座りっぱなしで、がん発症リスクが高くなる!?

「タバコと同じくらい体に悪い」というのも、決して言葉だけの話だけではないようです。

 

406万8,437人を対象に、がんとセデンタリーの関係を調べた大規模な疫学調査があります。

 

それによると、セデンタリーが1日2時間増えるごとに大腸がんの発症リスクが8%ずつ、肺がんの発症リスクが6%ずつ高くなることがわかってきました。

 

定期的に運動している人でも、セデンタリーの時間が長いと悪影響が出ることもわかってきています。

 

運動不足がいけないのはもちろんですが、それ以上に良くないのは、「長時間座っている生活

」なのです。

セデンタリーの合間に太ももを揉みましょう。

そうは言っても、現代の仕事内容は、毎日朝から晩までパソコンと格闘しなければならないことが多々あります。

 

セデンタリーの時間を長くしないためには、2時間に1回は席を立ち、手足を動かすことを心掛けた方が良いですね。

 

長時間座り続けないといけない時は、太もも(大腿四頭筋)のストレッチが有効です。

 

太ももは、人体最大の筋肉なので、このストレッチは、セデンタリーの害を減らすのに効果的です。

 

デスクワーク中に時々イスの上に正座して、片方ずつヒザを上げ下げして大腿四頭筋をほ
ぐすのもいい運動です。

 

正座できないようであれば、太ももを使うために、立って歩く、これだけでも血行は改善されます。

肥満もセデンタリーの影響あり!?

糖尿病などの生活習慣病を引き起こす「肥満」も、セデンタリーと深い関係があるようです。

 

アメリカの全国健康栄養調査を解析した研究から、興味深い事実がわかりました。

 

1988年から2010年にかけて、アメリカでは、年0.37%ずつ平均BMIが増え続けています。

 

BMIとは、体重と身長の比率から見ることのできる肥満度の指標です。体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数字で、25以上が「肥満」とされています。

170cm、74kgの場合、 (74÷1.7×1.7)=25.60となり、肥満判定となります。

 

この数字が増え続けているということは、アメリカ人の肥満化が年々進んでいることを意味しています。

 

ところが意外にも、この22年間でアメリカ人の摂取カロリーはほとんど増えていなかったのです。

 

では、何が変わったのかと言うと、セデンタリーの時間です。

 

22年前に比べて体を動かす習慣の無いセデンタリーの人は、女性が19.1%から51.7%へ、男性が、 11.4%から43.5%へと急増していたのです。

 

アメリカの全国健康栄養調査を解析した研究結果からは、摂取カロリーが同等でも、太っている人は、は座っている時間が長いことも確認されています。

 

歩くことは、アンチエイジングの基本!

「運動以外の日常での活動量」を増やすため、歩く機会を増やすなど、日常の生活の中でアクティブに歩いたりしてセデンタリーの時間を減らすだけでも、肥満に効果があるようです。

 

同じ「歩く」にしても、スピードを上げればより効果が高まります。

 

速く歩くほうがカロリーを消費するのは当然ですが、東京都老人総合研究所の研究結果によると、「歩くスピードが遅い人は、速い人に比べて死亡リスクが2.17倍高く、心血管疾患による死亡リスクは3倍高い」と言われています。

 

やはり、歩くことはアンチエイジングに直接関わる事項だということができますね。

 

1日15分の早歩きでも効果あり。

「運動は30分以上続けないと意味がない?」と思い込んでいる人も、意外と多いと思いますが、決してそんなことはないようです。

 

台湾の国家衛生研究院が41万6,175人を対象にした調査から、「1日15分」でも大きな効果があることが確認されています。

 

ウォーキングなど中程度の運動を毎日15分する人達は、まったく運動しない人に比べて死亡率が14%減り、寿命が約3年延びると言われています。

 

1日15分のウオーキングは、2回に分けてもいいでしょう。

 

例えば、「家から駅まで早歩きで8分なら、その往復だけでも1日15分のウォーキングになりますね。

ちょっとした意識が大切です。

なお、通勤中のウォーキングでは、「今、オレは運動している!」と意識してウォーキングするのがベストです。

 

面白いことに、意識すると同じ運動でも効果が高まります。

 

ホテルのメイドを2つのグループに分け、一方にだけ「掃除やベッドメイキングも運動です」と教えました。

 

同じ作業をしていたにもかかわらず、そう教えられたグループだけ一カ月後に平均体重が1.5kg減り、血圧や血や血糖値が下がりました。

 

普通のビタミン剤などでも、「これをのむと頭痛が治りますよ」と言われると、本当に治ることがあります。

 

これを「プラセボ(偽薬)効果」と呼んでいますが、どうやら運動でも同じような現象が起きるらしいのです。

 

「その気になる!」ことが大切ですね。