アンチエイジングを考えるなら、睡眠を軽視してはいけません
「睡眠時間が短い日は、頭がうまく回らない」「集中力が続かない」と感じたことはありませんか?
これは単なる気分の問題ではありません。
睡眠は脳と身体を休ませ、翌日に向けてコンディションを整えるための重要な時間です。慢性的な睡眠不足は、肥満や糖尿病、高血圧など、さまざまな健康問題との関連が指摘されています。
つまり、いつまでも若々しく健康な身体を維持したいのであれば、食生活や運動だけを意識するのでは不十分です。
アンチエイジングを実践するうえで、良質な睡眠を確保することも欠かせません。
かつては「昨日は2~3時間しか寝ていない」と、睡眠時間の短さを仕事への熱意のように語る人もいました。
しかし、睡眠を削って働き続ければ、集中力や判断力が低下し、結果として仕事の効率を落としてしまう可能性があります。睡眠時間を削ることが、必ずしも生産性の向上につながるわけではありません。
さらに、日本人の睡眠時間の短さは以前から指摘されてきました。
OECD(経済協力開発機構)の2009年のデータでは、調査対象国の中でも日本は睡眠時間が短い国の一つでした。
NHKが5年ごとに実施している「国民生活時間調査」でも、2010年の日本人の平均睡眠時間は7時間14分。特に40~50代では、ほかの年代と比較して睡眠時間が短い傾向がみられました。
必要な睡眠時間には個人差があるため、「必ず○時間眠ればよい」と一律に決めることはできません。
大切なのは、単純な時間だけではなく、日中に強い眠気を感じず、心身の疲労を十分に回復できる睡眠を確保することです。
睡眠を削る生活が続けば、脳だけでなく身体にも負担がかかります。
睡眠不足が続くと、身体にもさまざまな影響が及びます
睡眠不足による影響は、「頭がぼんやりする」という程度ではありません。
睡眠時間と健康状態との関連については、さまざまな研究が行われています。
40歳以上の54,269人を対象とした研究では、睡眠時間が6時間以下の人と10時間以上の人で、肥満、糖尿病、心臓病などの有病率が高い傾向が報告されています。
(出典:SLEEP 2013;36(10):1421-7)
もちろん、こうした研究だけで「睡眠時間が短いことが病気の直接的な原因」と断定することはできません。
しかし、睡眠不足が続くと食欲や糖代謝などに影響し、体重管理や血糖コントロールが難しくなる可能性があります。また、自律神経や血圧、精神状態などへの影響も指摘されています。
アンチエイジングという観点でも、睡眠は重要です。
睡眠中には、身体の修復や代謝に関係するさまざまなホルモンが働きます。
その一つが成長ホルモンです。成長ホルモンは子どもの成長だけに必要なものではなく、大人になってからも身体の組織の維持や代謝などに関係しています。
さらに、夜間にはメラトニンが分泌され、睡眠と覚醒のリズムを整える役割を担っています。
だからこそ、「若々しく健康でいるために何をするべきか」と考えるなら、高価な美容法や健康食品だけに注目するのではなく、まず毎日の睡眠を見直すことが重要です。
「よく眠る」という基本的な生活習慣そのものが、健康的なアンチエイジングにつながるのです。
アンチエイジングのために良質な睡眠をとる7つの習慣
では、睡眠の質を高めるためには、具体的に何をすればよいのでしょうか。
今日から取り入れやすい7つの習慣をご紹介します。
①カフェイン・タバコ・お酒との付き合い方を見直す
コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインには覚醒作用があります。
そのため、夕方以降に大量のカフェインを摂取すると、寝つきが悪くなったり、睡眠の質に影響したりする可能性があります。
タバコに含まれるニコチンにも覚醒作用があるため、就寝前の喫煙は避けたほうがよいでしょう。
そして注意したいのがお酒です。
アルコールを飲むと眠くなるため、「寝酒をすればよく眠れる」と思っている人もいるかもしれません。
しかし、アルコールは一時的に寝つきをよくしても、その後の睡眠を浅くしたり、途中で目が覚めやすくなったりすることがあります。
「眠るために飲む」という習慣は、睡眠の質という観点ではおすすめできません。
②寝る直前の食事を避ける
良質な睡眠を目指すなら、食事の時間にも気を配りましょう。
就寝直前にたくさん食べると、眠っている間にも消化活動が続くことになります。特に脂っこい食事や大量の食事は、胃腸への負担になりやすいため注意が必要です。
できるだけ夕食は就寝直前を避け、余裕をもって済ませることをおすすめします。
どうしても食事が遅くなる場合には、量を控えめにするなど、胃腸への負担を減らす工夫をするとよいでしょう。
③適度な運動を習慣にする
睡眠の質を高めるためには、日中の適度な運動も有効です。
ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を習慣的に行うことで、睡眠の改善が期待できます。
ただし、寝る直前に激しい運動をすると身体が興奮し、かえって眠りにくくなる場合があります。
大切なのは、「夜に運動すれば必ずよく眠れる」と考えることではなく、自分の生活リズムに合わせて無理なく運動を続けることです。
まとまった運動時間を確保できない人なら、一駅分歩く、階段を利用する、昼休みに散歩するといった方法でも構いません。
毎日少しずつ身体を動かす習慣をつくりましょう。
④寝る前のパソコンやスマホを控える
夜になると、身体ではメラトニンというホルモンの分泌が増え、自然な眠気が生じます。
一方、夜間にスマートフォンやパソコンなどの明るい画面を長時間見ると、光によって体内時計や眠気に影響が出る可能性があります。
さらに問題なのは、光だけではありません。
SNS、動画、ゲーム、仕事のメールなどを寝る直前まで続けていると、脳が興奮した状態のままベッドに入ることになります。
そのため、良質な睡眠を目指すのであれば、就寝前はスマートフォンやパソコンから少し離れ、脳を休息モードへ切り替える時間をつくることが大切です。
反対に朝は、起床後に明るい光を浴びることで体内時計を整えやすくなります。
スマートフォンやパソコンを完全に手放す必要はありません。重要なのは、便利な道具だからこそ使用する時間を上手にコントロールすることです。
⑤自分がリラックスできる香りを取り入れる
寝室をリラックスできる環境に整えることも、快適な睡眠につながります。
その方法の一つが香りです。
ラベンダーなどの香りについては、睡眠やリラックスとの関係を調べた研究もあります。
ただし、「この香りなら必ず眠れる」というものではありません。
香りの好みには個人差があるため、刺激が強すぎない範囲で、自分が心地よいと感じるものを取り入れることが大切です。
寝室を「身体と脳を休める場所」として整えることが、自然な眠りへの第一歩になります。
⑥就寝前の入浴は、熱すぎないお湯で
入浴も睡眠の準備として活用できます。
寝る直前に熱いお湯へ入ると身体への刺激が強くなり、人によっては目が冴えてしまうことがあります。
睡眠前にリラックスすることが目的なら、熱すぎないお湯にゆっくり浸かるほうが適しています。
入浴によって身体をリラックスさせ、その後ゆったりと過ごしてからベッドへ入る。
この流れを習慣化すれば、身体に「そろそろ眠る時間だ」と知らせるルーティンにもなります。
⑦眠れないのに、無理にベッドで粘らない
「早く眠らなければ」と焦れば焦るほど、かえって眠れなくなることがあります。
眠れない状態で長時間ベッドに居続けるより、一度ベッドを離れ、暗めの環境で静かに過ごし、眠気を感じてから再び横になるという方法もあります。
また、日中にどうしても眠気が強い場合には、短時間の昼寝を上手に利用する方法もあります。
ただし、長時間の昼寝や遅い時間帯の昼寝は、夜の睡眠に影響することがあるため注意しましょう。
そして、「毎日6時間寝ているから大丈夫」と睡眠時間だけで判断するのもおすすめできません。
必要な睡眠時間には個人差があります。
朝すっきり起きられない、日中に強い眠気がある、十分寝ているつもりなのに疲労感が続く、といった状態があるなら、睡眠の「時間」だけでなく「質」にも目を向ける必要があります。
こうした状態が長期間続く場合や、強いいびき、睡眠中の呼吸停止などを指摘されている場合には、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が隠れている可能性もあるため、医療機関への相談も検討しましょう。
アンチエイジングというと、食事、運動、美容、サプリメントなどに目が向きがちです。
しかし、それらに力を入れていても、毎日の睡眠を犠牲にしていては、健康的な生活習慣とはいえません。
睡眠は、健康と若々しさを維持するための重要な生活習慣の一つです。
まずは今夜から、睡眠時間を確保し、眠りやすい環境を整えることから始めてみてください。
毎日繰り返す睡眠だからこそ、その積み重ねが将来の健康を支える大きな力になります。

