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男性ホルモンの発見と研究|テストステロンの歴史・分泌の仕組み・主な働きを解説

男性ホルモンと聞くと、

「筋肉をつくるホルモン」
「性欲や男性機能に関係するホルモン」

というイメージを持つ人も多いでしょう。

しかし、男性ホルモンの研究は性機能だけにとどまりません。

現在では、筋肉や骨、造血、性機能など、身体のさまざまな働きと関係していることが知られています。

その中心となるのがテストステロンです。

この記事では、男性ホルモンがどのように発見され、どのような研究が行われてきたのかを振り返りながら、テストステロンが作られる仕組みや主な働き、DHTやフェロモンとの違いについてわかりやすく解説します。

男性ホルモンはどのように発見された?

1930年代に男性ホルモン研究が大きく進展

男性ホルモン研究が大きく進んだのは、20世紀前半です。

1931年、ドイツの化学者アドルフ・ブーテナントらによって、男性ホルモン作用を持つ物質の一つであるアンドロステロンが単離されました。

その後、1935年前後にはテストステロンが単離・合成され、男性ホルモン研究は急速に発展していきます。

ブーテナントは性ホルモンに関する研究などが評価され、1939年にノーベル化学賞を受賞しました。

ノーベル平和賞ではありません。

この時代の研究によって、男性ホルモンは単に「男性らしさ」をつくるだけではなく、身体のさまざまな組織に作用することが少しずつ明らかになっていきました。

男性更年期とテストステロン研究

その後、加齢に伴う男性ホルモン低下と体調変化についても研究が進められました。

20世紀中頃には、男性の加齢に伴う性機能低下、疲労感、気分の変化などと男性ホルモンとの関係が報告されるようになります。

テストステロン補充による症状改善を報告した初期の研究もあり、これが後の男性更年期研究につながっていきました。

ただし、現在では、

疲労感や気分の落ち込みなどがあれば、すべてテストステロン不足が原因というわけではない

と考えられています。

症状とホルモン値の両方を確認しながら、総合的に判断することが重要です。

男性ホルモンが作られる仕組み

テストステロン分泌は脳からの指令で調整される

男性のテストステロンは主に精巣で作られます。

しかし、精巣が独自に判断してテストステロンを作っているわけではありません。

その司令塔となるのが脳の視床下部と下垂体です。

まず、視床下部から、

GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)

が分泌されます。

GnRHの刺激を受けると、下垂体から、

  • LH(黄体形成ホルモン)
  • FSH(卵胞刺激ホルモン)

が分泌されます。

男性では、LHが精巣のライディッヒ細胞を刺激し、テストステロン産生を促します。

一方、FSHは主にセルトリ細胞などへ作用し、テストステロンなどと協力しながら精子形成に関わります。

この一連の仕組みは、

視床下部-下垂体-性腺系

と呼ばれています。

思春期に男性ホルモンの働きが活発になる

思春期になると、このホルモン系が活発に働くようになります。

その結果、

  • 精巣の発達
  • 陰茎など男性生殖器の発達
  • 声変わり
  • 筋肉量の増加
  • 体毛やひげの発達

など、男性の二次性徴が進みます。

ただし、「男性ホルモンが出るようになると男を自覚する」といった表現は、心理的・社会的な要素を単純化しすぎています。

男性ホルモンは身体的発達には深く関わりますが、性自認や人格を決めるものではありません。

男性ホルモンにはどんな種類がある?

男性ホルモン作用を持つ物質は総称してアンドロゲンと呼ばれます。

代表的なものには、

  • テストステロン
  • ジヒドロテストステロン(DHT)
  • アンドロステンジオン
  • DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)

などがあります。

この中でも、成人男性で中心的な役割を担うのがテストステロンです。

テストステロンの主な産生場所

男性では、テストステロンの大部分が精巣のライディッヒ細胞で作られます。

副腎でもDHEAやアンドロステンジオンなどのアンドロゲンが作られますが、成人男性の血中テストステロンについては精巣が主要な供給源です。

そのため、

「テストステロンの95%が精巣、残り5%がDHEAとして副腎から出る」

と単純に整理するより、

テストステロンは主に精巣で作られ、副腎もアンドロゲン産生に関わっている

と理解するほうが正確です。

男性ホルモンの材料にはコレステロールが使われる

テストステロンを含むステロイドホルモンは、体内でコレステロールを材料として合成されます。

ただし、

「コレステロールを減らすとテストステロンが不足する」
「肉や脂を多く食べれば男性ホルモンが増える」

という単純な関係ではありません。

体内ではコレステロール自体も作られており、通常の食事で必要量を摂取できている人が、テストステロンのために脂質を過剰摂取する必要はありません。

極端なエネルギー不足や栄養不足はホルモン環境へ影響する可能性がありますが、重要なのはバランスのよい食生活です。

テストステロンにはどんな働きがある?

テストステロンの働きは、筋肉や性機能だけではありません。

主に、

  • 男性の二次性徴
  • 筋肉量や筋力の維持
  • 骨量の維持
  • 赤血球産生への関与
  • 性欲や性機能への関与
  • 精子形成への関与

などがあります。

筋肉や骨の維持

テストステロンは筋肉や骨に作用し、筋肉量や骨量の維持に関係しています。

そのため、医学的にテストステロンが著しく低い状態では、筋力低下や骨量低下がみられることがあります。

造血にも関係する

テストステロンは赤血球産生にも関与しています。

一方で、テストステロン補充療法では赤血球が増えすぎる場合もあるため、治療中には血液検査などによる確認が必要です。

体脂肪との関係

テストステロン値が低い男性では、体脂肪や内臓脂肪が多い傾向がみられることがあります。

ただし、

テストステロンが動脈硬化を直接防ぐ

と単純に言い切ることはできません。

ホルモン、体重、血圧、血糖、脂質、喫煙など多くの要因が心血管リスクに関係します。

DHT(ジヒドロテストステロン)とは?

テストステロンは一部の組織で、

5α還元酵素

という酵素によってDHT(ジヒドロテストステロン)へ変換されます。

DHTはアンドロゲン受容体への作用が強く、

  • 前立腺の発達
  • 外性器の発達
  • ひげや体毛
  • 皮脂腺
  • 男性型脱毛症(AGA)との関係

などに関わります。

特に男性型脱毛症では、DHTと毛包の感受性が重要な要素の一つです。

DHTは「強い男性ホルモン」と表現されることがありますが、単純に多いほどよいものではありません。

身体の部位によって作用は異なります。

テストステロン低下と身体・精神の関係

テストステロン値が医学的に低い男性では、

  • 性欲低下
  • 勃起機能の変化
  • 筋力低下
  • 骨量低下
  • 疲労感
  • 気分の落ち込み

などの症状がみられることがあります。

一方で、

「テストステロンが下がれば必ず判断力や記憶力が落ちる」

とまでは言えません。

認知機能や気分には、睡眠、ストレス、うつ病、生活習慣病、薬剤、加齢などさまざまな要因が関係します。

また、テストステロン低下そのものを「新しい生活習慣病」と位置づけるのも適切ではありません。

医学的には、症状とホルモン値などを組み合わせて、性腺機能低下症やLOH症候群などが検討されます。

ホルモンとフェロモンはまったく違う

「男性ホルモン」と「フェロモン」を同じようなものだと考えている人もいるかもしれません。

しかし、両者は働く場所が大きく異なります。

ホルモンは自分の体内で作用する

ホルモンは体内で作られ、血液などを通じて別の組織へ運ばれ、自分自身の身体へ作用します。

テストステロンもその一つです。

フェロモンは同種の別個体へ作用する化学物質

フェロモンは一般的に、生物が体外へ放出し、同じ種類の別個体に特定の行動や生理反応を引き起こす化学物質を指します。

昆虫ではフェロモンの存在が明確に確認されています。

有名なのが、カイコガの性フェロモンとして知られるボンビコールです。

1950年代に、アドルフ・ブーテナントらによってその化学構造が明らかにされました。

また、「フェロモン」という用語自体も1959年に提唱されています。

人間に「性フェロモン」はある?

人間については、特定の化学物質が他者の気分や生理反応に影響する可能性を調べた研究があります。

その一つとして研究されているのがアンドロスタジエノンです。

一部の実験では、気分やホルモン反応との関連が報告されています。

しかし、

人間に昆虫のような明確な「性フェロモン」が存在するかどうかについては、現在も科学的な議論があります。

そのため、

「男性の汗に含まれる物質を嗅ぐと女性が興奮する」
「男性ホルモンを増やせばフェロモンが強くなる」

といった単純な理解は避けたほうがよいでしょう。

男性ホルモンは多ければ多いほどいい?

テストステロンは男性の身体にとって重要なホルモンです。

しかし、

多ければ多いほど若くなる、元気になる、男性らしくなる

というものではありません。

外部からテストステロンを過剰に使用すると、

  • 赤血球の増加
  • にきびや皮脂の増加
  • 精子形成の抑制
  • 精巣の萎縮
  • その他の副作用

などが問題になることがあります。

特に将来子どもを希望している男性では、自己判断でのテストステロン使用は避けるべきです。

まとめ|男性ホルモンは「増やす」より正しく理解することが大切

男性ホルモンの研究は、1930年代のアンドロステロンやテストステロンの発見をきっかけに大きく発展しました。

現在では、テストステロンが、

  • 筋肉
  • 造血
  • 性機能
  • 精子形成

など、男性の身体に幅広く関係することがわかっています。

また、男性では主に精巣で作られ、その分泌は視床下部や下垂体からの指令によって調整されています。

一方で、

「男性ホルモンが多ければ健康」
「テストステロンを増やせば若返る」
「男性ホルモンを自由にコントロールできる」

という考え方は適切ではありません。

テストステロンは、必要な量が適切な範囲で保たれることが重要です。

疲労感、性欲低下、筋力低下、気分の落ち込みなどが続く場合には、「男性ホルモンが減ったから」と自己判断するのではなく、泌尿器科や男性更年期外来などで相談してみましょう。

男性ホルモンを正しく理解し、身体全体の健康を整えること。

それが40代・50代以降の男性にとって、より現実的な健康管理につながります。